こんにちは。鍼灸師科の村井です👓
突然ですが、皆さんは「疫学」という言葉をご存じでしょうか。
広辞苑では
「疾病・事故・健康状態について、地域・職域などの多数集団を対象とし、
その原因や発生条件を統計的に明らかにする学問。」という風に定義されています。
簡単に言うと
「病気になった人たちの体質や生活習慣などを調べて共通点などを見つけ、病気の予防や治療に役立てる」という内容の学問です。
例えば、かつてイギリスでコレラが大流行したときに、
ジョン・スノーという人物が原因を突き止めたお話があります。
当時は空気で感染すると信じられていましたが、大勢の患者を調べていた時に
「コレラ患者が同じ場所の水を飲んで生活している」という点に気づき、
本当は空気ではなく水で感染することを発見しました。
日本では、明治時代に高木兼寛(たかきかねひろ)という人物が、
当時の軍隊で大流行していた脚気の原因を、疫学を駆使して突き止めました。
当時は細菌などの病原体が原因で脚気になると信じられていたのですが、
彼は「同じ生活をしている軍人でも欧米人は脚気にならない」という点に気づき、
「ひょっとして普段食べているものが原因なのでは」という仮説を立てました。
そこで、実際に食事のメニューを変えながら調べることで、
脚気の原因が栄養バランスの偏りであることを突き止めました。
(現在ではビタミンB1の不足によって脚気になることがわかっていますが、当時は「ビタミン」という栄養の存在すら知られていませんでした)
「病気の原因を突き止める」といえば、
顕微鏡などで細胞やウイルスなどを観察しながら研究している様子をイメージするかもしれません。
ですが、仮に病気の正体をつかめなくても、多くのデータを研究することで原因を突き止めたり、
予防や治療を行ったりすることができるというわけです。
実は、東洋医学のような古くから伝わっている医学も、
ある意味では「疫学」に頼って発展してきたということができます。
昔は顕微鏡のような便利な道具が無く、病気というものは正体不明の得体がしれない存在でした。
そこで様々な試行錯誤を重ね、効果のあった治療方法や症例を集めることで共通点や法則性を見つけ出し、
仮説を立ててはまた試行錯誤を重ね・・・。
このような作業をひたすら繰り返し、膨大なデータの積み重ねの上で成り立っているのが、古くから続いている伝統的な医学なのです。
医学が発展した現代でも、正体のわからない病気というのは数多く存在します。
そのような病気でも予防法や治療法が存在しているのは、疫学という存在のおかげです。
それは現代医学でも東洋医学でも変わりません。
そんな先人たちの積み重ねをこれからも大事にし、
同時に未来の人たちの役に立てるような活躍を残していきたいですね。